先週、彼の実家のある姫路で、大きな秋祭りがあるというのでお邪魔した。
「魚吹(うすき)の提灯祭り」というそのお祭りは、暗闇の中を竹竿に括りつけた提灯を高く掲げて練り歩き、楼門の前にさしかかるとお互いの提灯を叩き割り合うという、幻想的かつ血の騒ぐものだった。(外国人に見せたら、"Exciting!!"と言うのだろうなあと思った)
冷んやりと澄んだ夜空に浮かぶ上弦の月と、「ヨイヨ!ヨイヨ!」と掛け声を上げながら町内を進むまわし姿の男達の姿がとても印象的だった。
途中、暗がりにぼうっと浮かぶ田んぼや、「シャディのサラダ館」(何なのかはよく解らないが懐かしいものの代表)などに目を奪われ、その都度立ち止まり、またブラブラと神社に向かって歩いた。
ひと通りお祭りの熱気を堪能した後、ベビーカステラのあま〜い匂いが漂ってきたので、買うことにした。ベビーカステラを売っている屋台はたくさんあったのだが、より美味しそうなベビーカステラを求め歩くうち、最後の屋台に行き着いてしまったので、そこで買うことにした。
ブラブラと焼きたてを食べ歩きしながら、ベビーカステラというものは、その美味しそうなあま〜い匂いがたまらないのであって、味はそこまででもないんだなあ、、と思った。(それか、もっと美味しい屋台があったのかもしれない)その感想を口に出して言うと、彼も全く同じように感じていて嬉しかった。
翌日は、近所を案内してもらうことになった。
網干(あぼし)というそのエリアは、用水路や、揖保の糸のお素麺で有名な揖保川など、私にとっては珍しい風景ばかりで、飽きずにずっと歩いていられるなあと感じた。
その中でも、私の心を捉えて離さなかったのが、「橋本町商店街」という古い商店街だった。俗に言う「シャッター通り」なのかなと思ったが、彼曰く、小さい頃は栄えていたらしい。もちろん、当事者にとってはシャッターを下げたかった訳ではなかったのだろうし、悲しいことなのだろうが、そうした栄枯盛衰の跡や、ピカピカでないものがそのままの状態になっていることに、私はとても心が惹かれた。
対照的に、姫路駅から姫路城へ向かう通りにある商店街は、姫路最大の観光地だけあって、人通りが多く、ピカピカで、血が通っているのだが、私は「橋本町商店街」の全盛期を想像しても、こちらの方が好きだなあと思った。
ボロボロの屋根も、失敗や残骸といったネガティブなものではなくて、時を重ねてできたシミやシワというか、枯葉というか、そんな美しささえ感じた。
この春に改修を終えて、真っ白ピカピカの姫路城も壮観だったが、「小さな旅」のタイトル通り、個人的に心に残るものというのはこうした小さなものかも知れない。
これからも沢山の小さな旅を続けていきたいと思う。