2015年10月11日日曜日

スピード違反

先週、また例の昔ながらの喫茶店に立ち寄った。

まだ数回しか通っていないけれど、早速お気に入りの席ができたので、空いている場合は迷いなくそこに直行する。

今回も、迷わず座ったのだが、注文をとってもらってから「しまった」と少し後悔した。
パーテーション越しの隣の男性客二人の しゃべり声の音量がMAXだったのだ。
公募ガイドを読むのに集中したかったので、席を変えようかとも思ったけれど、(私の大切に思っている)お店の奥様に面倒をかけたくないのと、話の内容がちょっと面白くなってきたので、公募ガイドチェックはそこそこに、盗み聞きを楽しむことにした。

(ちなみに、盗み聞きのことを英語で"eavesdrop"(イーブスドロップ)と言うが、語源が気になり調べた所、"eaves(家の軒)"+"drop(滴り落ちる水滴)"、つまり雨だれから来ているとのことだった。「盗み聞き」より風流な感じがする。)

男性客は、二人ともおそらく30代半ばくらいの、なんらかのベンチャー会社の若い社長同士という感じだった。しきりに、互いの事業計画の意見交換を行っている。
印象は、内容はともかく、とにかく早口だった。

男性A「野菜くるよ、野菜。儲かるよ〜」
男性B「え、ガチ?」
私の心の声・・・(え、ガチ??(白目))

男性A「そうそう、山はいいよぉ、マイナスイオン半端ないからチョー癒されるし」
男性B「わっかる!ラスベガスでもさー、24時間マイナスイオン出す装置あるのよ。あれ、浴びたらノンストップで遊べるよ」
私の心の声・・・(ガチで!?)

と、ひとり密かに会話に合いの手を打って楽しんでいたところで、Aが追加注文のために奥様を呼んだ。

男性A「すいません、コーヒーと、カフェオレください。」

奥様「はい。コーヒーは、マンデリンでよろしいですか?」

男性A「あ、やっぱコーヒーはアイスで、カフェオレはホットで」

奥様「はい。では、コーヒーはアイスで、、こちらはマンデリンでよろ、、」

男性A「あやっぱ、どっちもコーヒー、ふたつともホットで」

奥様「はい。それでは、ホットコーヒーを、お二つですね?マンデリンで、、」

男性「えーと、ひとつはアイスで、ひとつはホットで」

奥様「......あ、それでは、ホットコーヒーとアイスコーヒーをそれぞれお一つずつですね?かしこまりました...」

私の声は危うく「心」の枠をはみ出して、本物の「声」になりそうだった。

「おい!!赤あげて、白下げて、 白あげないで赤下げる、か!!それからマンデリンでいいのか奥様が何度も聞いてるだろ!!答えろ!」と。

さらに悪夢なことに、Aはとにかく異常なくらいの早口で、対して奥様は、悠久の時を体現しているようなゆったりとした口調なのだ。かといって、Aがフェラーリで奥様が牛車なのでは決してなく、Aはやっつけで組み立てた車が速度を守らずただ暴走している感じで、奥様は高級セダンが安全運転でゆっくり静かに走っている、という感じなのだ。

私だったら、ここまで早口で一方的で、しかもコロコロと注文内容を変える客には、マンデリンの「ガチ」ホットを頭頂から注いでしまいそうな所を、この奥様は「イラリ」ともせずに、終始ひたすら誠実に聞き取ろうとし、丁寧に接した。もう、奥様の大大ファンである。

別に、やる気みなぎるベンチャー社長談義をバカにしている訳ではない。
それどころか、笑えるくらい早口になるほど仕事に夢中なのは気持ちがいいと思ったほどだ。
ただ、「顧客心理がどうの」「ニーズに合わせるのが大事」「ユーザー目線」「現場主義」などと超早口で出てくるキーワード達が、先の奥様とのやりとりで机上の空論なんだな、と感じてしまった。
だって、自分の会話の速度で奥様に接して伝わるか、伝わらない場合は誰のせいなのかを全く考えていないのだから。喫茶店の注文時ですら雑なコミュニケーション能力で、どうやって「顧客心理」を操るのか、とても謎である。

それにしても、こういう場面に出会えるからこそ、また行きたくなってしまう。
そして、次回からは「ホットコーヒーを、マンデリンでお願いします」と注文しようと固く決めたのだった。ガチで。





4 件のコメント:

Ke1Tanaka さんのコメント...

その2人の髪型は、会った事なくても分かる。
微妙な茶髪のショートで、頭頂をツンツンと立たせてる。

渡辺裕一 さんのコメント...

そして、ワイシャツの喉部分に色つきのボタンが二つ。

creamy emi さんのコメント...

微妙な茶髪のショートが耳まで伸びかけてはいましたが、9割当たっています!恐るべし、透視力!!

creamy emi さんのコメント...

渡辺様
パテーションが邪魔して確認できませんでしたが、間違いないと思います。そして、靴の先は尖っている、に1000点かけたいと思います。